前日は、娘の夢だった野生のシャチを探して、ホエールウォッチングに出かけました。
残念ながらシャチには出会えませんでしたが、静かな海に姿を現したクジラの光景は、今も忘れられません。
そして迎えたモントレーでの4日目。
この日は、カーメルの海岸で遊び、農園でピクニックをした後、ポイントロボス自然保護区を散策することになりました。
モントレーで過ごす時間も、残りわずかです。
カーメルへ。新しい出会いと、絵本のような街並み
朝食をゆっくり食べていると、ホストファミリーのケイさんを訪ねて、知人の女性が子どもたちと一緒にやって来ました。
初対面ということもあり、子どもたちは少し緊張している様子でした。
軽く自己紹介をした後、みんなでカーメルへ向かうことに。
私の運転する車には、ホストファミリーの娘さんも乗っていました。道中、子どもたちは楽しそうに話しています。
アメリカでの運転にも少しずつ慣れてきましたが、山道の急な下り坂では、まだ緊張しました。
ところが、山を越えると景色が一変します。
花に囲まれたコテージ風の建物、小さな家々、落ち着いた街並み。
カーメルは、まるで絵本に出てくるヨーロッパの村のようでした。
冷たい海もお構いなし。子どもたちの海遊び
海岸の駐車場に到着すると、すでに多くの車が停まっていました。
なんとか駐車できたものの、その後は車が次々とやって来て渋滞に。少し遅かったら停められなかったかもしれません。
車を降りると、子どもたちは海を見つけて一目散に走り出しました。
私が着替えなどの荷物を持って追いかけると、娘たちは靴を脱ぎ、息子はすでに海の中。
ズボンは膝の上までびしょ濡れです。
子どもたちは、長いワカメのような海藻を引っ張り上げたり、波の中に入ったり、砂浜を走り回ったりしていました。
海岸では犬たちも楽しそうに駆け回っています。特に印象に残ったのは、2匹の真っ白なサモエドでした。
広い砂浜を自由に走る姿を見ているだけで、心が和みます。
ただ、海の水は想像以上に冷たく、子どもたちは早めに海遊びを切り上げることになりました。

農園でのピクニック。遊びながら縮まる距離
海岸を後にして向かったのは、カーメルにある「Earthbound Farm Stand(アースバウンド・ファーム・スタンド)」という農園です。
途中、道路を灰色の動物が横切り、思わず急ブレーキをかけました。
キツネかコヨーテだったのでしょうか。はっきりとは分かりませんでしたが、思いがけない野生動物との出会いでした。
農園に到着すると、緑豊かな庭が広がっていました。
この日は売店に野菜がそれほど多く並んでいませんでしたが、農園の奥まで歩いていくと、ピクニックにぴったりの場所が見つかりました。

持ってきた食事を広げ、大人たちはゆっくりおしゃべり。
ケイさんとは、こんな農園が日本にもあったら面白いという話になりました。
農園の近くにカフェを作ったらどうだろう。どうすれば人が集まり、事業として成り立つのだろう。
旅先で、将来の暮らしや仕事につながる話をしているのが、なんだか不思議でした。

一方、子どもたちは広い農園を走り回っています。
娘と息子は途中でけんかをしたようで、息子は少しすねて、一人で丘の陰に座っていました。
すぐに声をかけようか迷いましたが、少し離れた場所から見守ることにしました。
その頃、娘たちはラズベリー畑を見つけ、赤く熟した実を夢中になって探していました。
最初は緊張していた子どもたちも、ブランコや鬼ごっこ、「だるまさんが転んだ」をしているうちに、少しずつ打ち解けていきます。
言葉や育った環境が違っても、子どもたちが仲良くなるきっかけは、意外と同じなのかもしれません。
途中で飲み物を買いに行くと、750mlほどの缶飲料が8ドルもして驚きました。
アメリカの物価の高さを、こんなところでも実感します。
ポイントロボスへ。想像を超える太平洋の景色
ピクニックの後は、知人の家族と別れ、私たちはポイントロボス自然保護区へ向かいました。
途中、子どもたちの希望でアイスクリームを買うことに。
ところが、お店のメニューを見ても、どんな味があるのかよく分かりません。
困っていると、ホストファミリーの娘さんが店員さんに英語で尋ねてくれました。
おかげで無事に注文でき、子どもたちも満足そうです。
ポイントロボスに到着すると、ケイさんが事前に用意してくれた駐車に関する書類のおかげで、入口の手続きもスムーズに進みました。
さらに、係員の方から日本語のパンフレットを渡してもらうことができました。
何度も訪れたことがあるというホストファミリーの娘さんの案内で、海岸沿いのトレイルを歩き始めます。
青い空と、どこまでも続く太平洋。
荒々しい岩肌に白い波が打ちつけ、少し歩くたびに景色が変わっていきます。
森を抜けると、目の前に広大な海が現れる。
その繰り返しが、私たちをまったく飽きさせませんでした。

岩場を進む子どもたちと、心配する親
子どもたちは、海岸の岩場にもどんどん進んでいきました。
普段は慎重な娘も、ホストファミリーの娘さんにつられるように歩いていきます。
一方、息子はなかなか二人のペースについていけません。
海岸で靴を濡らしたため、借りたクロックスを履いていましたが、少し大きくて歩きづらそうです。
だんだん機嫌も悪くなってきました。
私も、岩場を歩く子どもたちが心配で、つい何度も声をかけてしまいます。
「気をつけて!」
「そこ、滑るよ!」

あまり口うるさく言わず、子どもたち自身に経験させた方がいいのかもしれない。
そんな思いもありました。
それでも、大きなけがだけは避けたいというのが親としての本音です。
足元には波が入り込んでできた潮だまりがあり、小さな生き物たちの姿も見えました。
岩に打ちつける波、透き通った海水、目の前に広がる青い海。
心配しながらも、私自身がこの自然にすっかり引き込まれていました。

前日の海で分からなかったことが、ここでつながった
岩場を観察していると、青く透き通った、不思議なものを見つけました。
前日のホエールウォッチングで、ガイドさんが説明していたものに似ています。
そのときは英語が理解できず、何の話をしているのか分かりませんでした。
そこで、ホストファミリーの娘さんに、そのことを話してみました。
すると、彼女も以前、学校のホエールウォッチングで同じような説明を聞いたことがあるそうです。
「プラスチックみたいに見えるけど、生き物なんだよ。タツノオトシゴみたいなものだよ」
そんなふうに教えてくれました。

後で調べてみると、写真に写っていたものは、カツオノエボシのようでした。
美しい青色をしていますが、強い毒を持つため、触れてはいけない生き物です。
前日の海では理解できなかったことが、翌日の岩場での会話をきっかけに、少しつながりました。
英語が分かれば、旅先で見える世界はもっと広がる。
そんなことを、改めて感じた出来事でした。
家族をこの場所に連れてこられた喜び
ポイントロボスは想像以上に広く、気づけばかなりの距離を歩いていました。
子どもたちも疲れてきたため、私は一人で駐車場まで戻り、車を取りに行くことにしました。
海岸沿いの道を一人で歩きながら、波の音を聞き、潮風を感じます。
ふと青空を見上げると、家族をこんな素晴らしい場所に連れてこられたことが、うれしくなりました。
旅の計画を立てていた頃には、こんな景色の中を家族で歩くことになるとは、想像していませんでした。
車で合流すると、子どもたちはさすがに疲れた様子です。
たくさん歩いて、たくさん遊んだ一日。
疲れていても、子どもたちの表情には満足感がありました。

モントレー最後の夜。あっという間だった日々
この日の夕方、ケイさんは翌日の仕事のため、家を空ける予定になっていました。
出発前にきちんと挨拶できるか心配でしたが、少しだけ顔を合わせる時間ができました。
これまで何から何まで助けてもらったことを思い返すと、感謝の気持ちでいっぱいです。
ケイさんは、自分の出発準備だけでなく、家のことや子どものことまで、最後まで気にかけてくれていました。
その夜は、ホストファミリーの娘さんと一緒に夕食を囲みました。
翌日は学校があるため、子どもたちは早めに休むことに。
そして、私たち家族にとっても、翌日はモントレーを離れる日です。
荷造りを始めなければなりません。
旅の最初に、ケイさんから「きっとあっという間だよ」と言われていました。
本当に、その通りでした。
初めてのアメリカでの運転。
慣れない英語に戸惑ったこと。
海で出会った野生のクジラ。
子どもたちが夢中になって遊んだ海岸や農園。
そして、家族で歩いたポイントロボスの美しい景色。
子どもたちが寝静まった後、妻と二人で荷物をまとめながら、そんな出来事を一つずつ思い返しました。
娘が「本物のシャチを見たい」と言い始めたことから動き出した、この旅。
まだシャチには出会えていません。
それでも、ここまで来たからこそ経験できたことが、たくさんありました。
目的地にたどり着くことだけが、旅の価値ではない。
そこへ向かう途中で出会った人や景色も、家族にとって大切な思い出になる。
モントレーでの最後の夜は、そんなことを感じながら静かに過ぎていきました。
翌朝、私たちはモントレーで最後の観光を楽しんだ後、飛行機で次の目的地、サンディエゴへ向かいます。
第11話へ続く(準備中)

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