親の葛藤
娘が「バンクーバーへ行ってみたい」と言い始めた頃、親としては複雑な気持ちでした。
もちろん、子どもの夢は応援したい。
でも現実的に考えると、海外旅行はそう簡単な話ではありません。
我が家は海外経験が決して豊富というわけではなく、子どもを連れての海外旅行には不安もありました。
費用はどれくらいかかるのか。
現地でトラブルが起きたらどうするのか。
英語も決して得意ではありません。
「いつか行けたらいいね。」
そんなふうに話しながらも、正直なところ、この時点ではまだ夢物語に近い感覚でした。
一方で、娘の熱意は少しも変わりません。
シャチについて調べ、本を読み、水泳教室へ通い続ける姿を見ていると、その思いが一時的な憧れではないことが伝わってきます。
親として、考えさせられました。
子どもが本気で好きになったものに出会える機会は、人生の中でそう何度もあるわけではありません。
もし実現できる可能性があるのなら、できる限り応援してあげたい。
気が付けば私たちは、
「行けるだろうか。」
ではなく、
「どうすれば行けるだろうか。」
を考えるようになっていました。
モントレーとの出会い
そんなことを考えていた年始のことでした。

実家へ帰省したとき、実家の隣に住む、妻が子どもの頃からお世話になっているピアノの先生のお宅へ遊びに行きました。
そこで自然と、娘の「野生のシャチを見てみたい」という話になりました。
すると、ちょうどアメリカから帰省していた先生の娘さんが、こんなことを教えてくれたのです。
「モントレーでもシャチが見られるよ。海外が心配なら、うちに来なよ。」
初めて聞く地名でした。
モントレーは、アメリカ・カリフォルニア州にある海辺の町です。
豊かな海洋生態系で知られ、一年を通してクジラやイルカが見られるホエールウォッチングの名所として、多くの人が訪れます。
そして、時期によっては野生のシャチが現れることもあると聞きました。
さらに、私たちにとって大きかったのは、現地に知り合いがいたことでした。
もし海外へ行くとしても、家族4人での本格的な海外旅行は初めてに近いものです。
言葉の壁もあります。
土地勘もありません。
だからこそ、何かあったときに相談できる人がいるという安心感は、とても大きなものでした。
もちろん、モントレーへ行けば必ずシャチに会えるわけではありません。
それでも、
「野生のシャチが見られる可能性がある。」
そして、
「家族でも挑戦できそうだ。」
そう思えたのです。
娘にとっては野生のシャチへ近づくチャンス。
親にとっては現実的に実現できそうな選択肢。
その二つが重なったとき、私たちの中で少しずつ気持ちが固まっていきました。
決断
モントレーで本当にシャチに会える保証はありませんでした。
野生動物が相手です。
何日滞在しても見られないことだってあります。
それでも、娘の「本物の野生のシャチを見てみたい」という気持ちは変わりませんでした。
鴨川シーワールドで初めてシャチショーを見た日から始まり、
トレーナーさんとの出会い。
水泳教室。
自由研究。
そして、本を通して広がった世界。
その積み重ねを見てきたからこそ、私たちも応援したいと思いました。
行かなければ、きっと何も起こりません。
でも、一歩踏み出せば、何かが見つかるかもしれない。
それは、娘が勇気を出してトレーナーさんへ話しかけたときに学んだことでもありました。
こうして私たちは決断します。
2026年のゴールデンウィーク、家族4人でアメリカ・モントレーへ行く。
娘の「シャチってすごい。」
あの日、鴨川シーワールドで何気なくこぼれた一言が、まさか家族4人で太平洋を渡ることにつながるとは、そのときは誰も想像していませんでした。
娘の夢は、いつしか家族みんなの挑戦になっていたのです。
次回は、旅行の準備と、思いもよらないハプニングの連続だった出発までの道のりを書きたいと思います。
📖 前後のお話
◀ 第2話「夢は行動を変える」はこちら
▶ 第4話「夢を現実にする準備」はこちら
📚 「シャチを追いかけてモントレーへ」シリーズ一覧はこちら


コメント