モントレー最後の朝
旅行5日目。
朝起きて、もう一度忘れ物がないか確認する。家族も少しずつ起き始め、みんなで朝食をとった。
お世話になった友人の娘さんのことが少し心配だったが、朝食を食べているうちに迎えの人が来て、元気に学校に登校した。
時間どおりに起きられたこともあり、朝はそれほどバタバタせずに済んだ。
本当にいろいろありがとう。
いよいよ、モントレーで過ごす最後の日だ。
最初のミッションは、日本にいる子供たちの祖母へ手紙を送ること。
先日のフェスティバルで郵便局を見つけていたので、そこで切手を買い、エアメールを送ることにした。
郵便局までの約1キロは妻が運転した。妻も今回の旅行に備えて国際運転免許証を取得していたので、その成果を発揮することができた。
郵便局の職員はとても親切だった。ただ、今までは友人たちがいろいろと通訳してくれていたので、自分たちだけでやり取りをしていると、急に外国に来たような気がしてきた。
家族で歩く、最後の海岸線
郵便局での用事を終え、もう一度モントレーの海岸線を散歩することにした。
ラバーズポイント(Lovers Point)とオッターポイント(Otter Point)の間で家族を車から降ろし、私はオッターポイントに駐車して、歩きながら合流する予定だった。
ところが、なかなか会うことができない。
家族を降ろした場所まで戻ってみたが、そこにも姿はなかった。さらに歩いていると、ようやく家族が見えてきた。
どうやら息子が、もう一度リスたちに会いたいと言い出し、ラバーズポイントに向かっていたらしい。
そういうことだったのか。
そこから家族全員で、オッターポイントを目指して散歩を始めた。

海岸沿いに広がるアイスプラント。美しい海岸線。そして、海を望むように建ち並ぶ家々。
そんな景色を眺めながら、家族でゆっくり歩いた。

何か特別なことをしているわけではない。ただ、家族で一緒に歩いているだけだ。
それなのに、この時間が本当に素晴らしかった。
散歩をすることに、これほど幸せを感じた時間はなかったと思う。

最後のお土産探しと、妻へのサプライズ
オッターポイントに到着すると、今度はオールド・フィッシャーマンズ・ワーフ(Old Fisherman’s Wharf)を目指した。
先日、私がランニングで訪れた場所だ。
目的は、ランニング中に見つけたシャチのパーカーを娘に見てもらうこと。そして、5月6日の結婚記念日に妻に贈るプレゼントを、娘と一緒に選ぶことだった。
ワーフの近くで、2時間無料の路上駐車ができる場所を見つけた。
この頃には、有料駐車場よりも路上駐車できる場所を探すようになっていた。日本の感覚では少し考えられないが、郷に入れば郷に従えということだろう。
午後2時のフライトに備え、12時頃には空港に到着したい。現在時刻は午前10時前。残された時間はそれほど多くなかった。
それでも家族は最後までモントレーでの観光を楽しんでくれた。

お土産屋さんを回りながら、ああでもない、こうでもないと商品を眺める。こうした時間も、旅行ならではの楽しさがある。
お目当てのホエールウォッチングのお店では、娘が気に入った色のパーカーに、ちょうどよいサイズがなかった。
そこで店員さんにお願いして、在庫をいろいろと探してもらった。
その間、妻が店員さんに尋ねた。
「最近、シャチは見られましたか?」
すると、私たちがホエールウォッチングに参加した前日には、シャチが見られたらしい。ただ、それも本当にラッキーな出来事だったようだ。
店員さんとはシャチについていろいろと話をしたが、そのシャチ愛はさすがのものだった。
好きなものを通じて共感するのに、言語は関係ないのだと感じた。
娘もシャチのパーカーを気に入ってくれたようで、ひと安心。
お店を出ると、以前YouTubeで見たことのあるシャチの看板を発見したので、家族で記念撮影をした。

そのとき、家族をアメリカに連れて来ることができたという感動が、自分の中にまたあふれてきた。
さて、私と娘にはもう1つのミッションが残っている。
妻への結婚記念日のプレゼント探しだ。
実は、あらかじめお店を回ったときに、コーギーのバスローブに目をつけていた。
息子にはキャンディーの詰め合わせに夢中になってもらい、妻がそれに付き添っている間に、娘と一緒にプレゼントを購入した。

作戦成功。
猫たちとの最後のひと騒動
買い物を終え、友人の家へ戻った。
ここからは荷造りの最終確認、飛行機のオンラインチェックイン、そしてホームステイ中に使わせてもらった部屋の掃除だ。
散歩に出かける前に回していた乾燥機も、すでに終了していた。友人が用意してくれたクォーターコインを、かなり使ってしまった。
シーツや布団を畳み、荷物をスーツケースに詰め直す。
乾燥機のおかげで洗濯が必要な衣類もほとんどなく、スーツケースにはまだ余裕があった。
そろそろ出発しようという頃、猫たちの姿が見当たらないことに気がついた。
探してみると、2匹はベッドの下に隠れ、もう1匹の白い猫はベランダで熟睡中だった。
子供たちが呼びかけても、ベッドの下から一向に出てこない。
結局、2匹はカリカリで誘導して無事に出てきてもらったが、ベランダの猫はどうしても起きない。
仕方がないので窓を少し開けた状態にして、友人に連絡しておいた。あとで隣の人が閉めてくれることになった。
最後の最後まで、猫たちには楽しませてもらった。
モントレーとの別れ
車に荷物を載せ、モントレー・リージョナル空港(Monterey Regional Airport)へ向かった。
車の窓から見える海や街並み。
今までは、ただただ美しいと思って眺めていた風景だった。
しかし、間も無く離れる今は少し違う。
次はいつ、この風景を見ることができるのだろう。
そう思うと、これまで何度も眺めてきた景色が、急に特別なものに感じられた。
今回の旅で過ごした時間が、どれほど貴重なものだったのか。
そんなことを考えながら、できるだけ今まで通った道を選んで空港に向かった。
空港までは20分程度だった。
今回は国内線だが、レンタカーの返却もあるので、出発の1時間前には到着するようにした。
レンタカーの返却場所は、友人が書いてくれた地図のおかげで迷わず到着できた。
ところが、駐車場にもアラモレンタカーの窓口にも店員がいない。
少し困っていたが、向かい側にある関連会社のエンタープライズで手続きができるとわかり、無事に返却できた。
モントレー・リージョナル空港は、とても小さな空港だった。
日本の田舎にある鉄道駅のような雰囲気だ。
航空会社のカウンターは2社くらい。ターミナル近くの旅客機も1機か2機程度で、あとは大小さまざまなセスナやプライベートジェットが見える。
空港の建物よりも、ターゲットのような大型スーパーの方が大きいのではないだろうか。
搭乗前、ターミナルの屋上から滑走路を眺めていると、1機のセスナが離陸していった。
自分で飛行機を操縦することが目標の私にとって、理想的な光景だった。

これこそ、自分が将来目指している姿だ。
実際にこうした光景を目にすると、自分にもできるのではないかという気持ちが湧いてくる。
いつか自分も、あのように飛行機を操縦してみたい。
空から見たモントレーと、息子の大ピンチ
搭乗手続きは、驚くほどスムーズに終わった。
ターミナルから地上に出て、スロープを上り、飛行機に乗り込む。

座席は通路を挟んで左右2席ずつ。珍しく私の隣には妻が座り、子供たちは2人で並んで離陸を待った。
ところが、機内アナウンスで出発が遅れるという情報が流れた。
もっとも、飛行機に乗ってしまえば、もう急ぐ旅ではない。
そのうち離陸するだろう。そんな気持ちで座っていると、いつの間にか眠ってしまった。
40〜50分くらいは寝ていただろうか。
飛行機の振動で目を覚ました。
もう着陸したのかと思ったが、なんと、まだ離陸すらしていなかった。
ちょうど誘導路から滑走路へ移動し始めたところだったのだ。
その後、離陸態勢に入ると、飛行機はあっという間に空へ舞い上がった。
窓の外にはモントレーの街が広がっていた。
空から見ても、本当に美しい街だった。

あの綺麗な海から、シャチが顔を出してくれないだろうか。
そんなことを思いながら、モントレーで過ごした日々を振り返った。
そして、心の中で街に別れを告げた。
飛行機が巡航に移ると、飲み物の機内サービスが始まった。
子供たちはジュースが飲めると大喜び。息子はスプライトを頼んだ。
ところが、このスプライトが、のちに息子を大ピンチに追い込むことになる。
機内では、久しぶりに妻とゆっくり話すことができた。
アメリカに家族で旅行に来られたこと、モントレーで過ごした日々のこと。
こうして旅行できている喜びを、2人で分かち合った。
飛行時間はあっという間に感じられた。
機内で地図を確認すると、サンディエゴが近づいているのがわかった。
窓の外を眺めていると、Xの形に交差する滑走路がある飛行場が見えてきた。
ミラマー海兵隊航空基地(MCAS Miramar)だ。

私の大好きな映画『トップガン』で、主人公が訓練に明け暮れる基地として知られる場所だ。
旅行に出発する前から、もしかしたら飛行機から見られるのではないかと期待していたので、思わず写真を撮った。
さらに飛行機が進むと、だんだん都市部が見えてきた。
モントレーとは街の雰囲気がまったく違う。都会に来たことを実感する。
沿岸部には軍艦が並んでおり、サンディエゴが軍港都市であることも感じられた。
やがてシートベルト着用サインが点灯し、飛行機は高度を下げ始めた。
そのとき、娘が声をかけてきた。
見ると、息子が涙を浮かべていた。
どうやら高度の変化でうまく耳抜きができず、耳が痛くなってしまったらしい。
さらに、先ほどのスプライトを一気に飲んだせいでトイレにも行きたくなり、吐き気まで感じていた。
炭酸飲料でお腹が膨れ、耳も痛い。それでも着陸前なので、トイレに行くことができない。
息子はエチケット袋を握りしめ、ひたすら耐えていた。
着陸までの時間が、とても長く感じられた。
ようやく飛行機が着陸し、扉が開いた。
私たちはなるべく早く機内を出て、到着の喜びを感じる間もなくトイレを探してダッシュした。
そして、トイレに入る前と出てきたあとの息子の変わりようといったら。
あまりの違いに、思わず吹き出してしまった。
こうして、私たちはサンディエゴに到着した。
新しい街、新しいレンタカー
ここからは、またレンタカーを借りてホテルへ向かう。
空港からレンタカーセンター行きのシャトルバスに乗った。
サンノゼでもそうだったが、サンディエゴのバスの運転手さんも、見た目は少し無愛想ながら、とても親切だった。キャリーバッグも快く運んでくれた。
バスは空港の周りをぐるっと回り、10分ほどでレンタカーセンターに到着した。
今回もアラモレンタカーを利用する。
手続きは2回目なので、何を聞かれるか大体わかっていた。
駐車場へ移動する途中、息子がいつもの行動に出た。
彼は街のフリーペーパーを集めるのが好きなのだ。
中を見ながら、その街には何があるのか、面白そうなものはないかと探すのを楽しみにしている。
今回、息子が気に入ったのは、4人乗りの自転車やゴーカートだった。
こうして新しい街の情報を探すのも、彼にとっては旅行の楽しみの1つなのだろう。
レンタカーの駐車場は2階にあった。
スタッフに声をかけると、指定された列に駐車してある車から、好きなものを選んで出発してよいとのことだった。
並んでいたのは、三菱のアウトランダー、トヨタのRAV4、フォルクスワーゲンのSUV。
ただし、フォルクスワーゲンには鍵がなかった。
外国車に乗ってみたい誘惑もあったが、慣れない街で運転することを考え、トヨタのRAV4を選んだ。
スタッフから子供用のブースターシートを追加で借り、返却方法を確認して出発した。
ゲートを抜けて公道に出ると、モントレーとは街の雰囲気が違うことをすぐに感じた。
交通量も多く、どことなく慌ただしい。
車の運転にも、少し緊張感が戻ってきた。
港と飛行機を眺められるホテル
Googleマップの案内に従い、ホテルを目指す。
今回宿泊するのは、ヒルトン・サンディエゴ・ハーバーアイランド(Hilton San Diego Harbor Island)だ。
名前のとおり海に面した場所にあり、対岸には軍の施設も見える。ヘリコプターが頻繁に離着陸しているのが印象的だった。
夕焼けに染まる海を横目に、ホテルへ到着した。
案内された部屋は8階のヨットハーバー側だった。
ところが、この部屋からの眺めが想像以上に素晴らしかった。
ヨットハーバーだけでなく、海の方まで見渡すことができる。

さらに、反対側には空母が停泊している姿が見え、空港まで眺められた。
ヨットハーバー、海、軍艦、そして飛行機。
自分の好きな景色が一度に広がっている。
最高の眺望だった。
サンディエゴ最初の夜はシーフード
この日の夕食は、ホテルから500メートルほどのところにあるシーフードレストラン、トム・ハムズ・ライトハウス(Tom Ham’s Lighthouse)へ向かった。
初めて訪れる土地で夕方に歩いて移動することには少し戸惑いがあったが、この辺りはホテルの宿泊者が多いようで、比較的落ち着いた雰囲気だった。

レストランは古い灯台をイメージしたような建物で、店内には大砲が展示されるなど、港町らしい雰囲気が感じられた。

息子はキッズメニューのチキン、娘はエビのグリル、妻はパエリア、私はブイヤベースを注文した。
サラダは店員さんおすすめのビーツのサラダにした。
これがとても美味しかった。ビーツの甘みと芋の相性がよく、おすすめにも納得した。
子供たちには付け合わせのインゲンやパエリアが少し辛かったようだが、チキンやエビは美味しそうに食べていた。
普段、妻が作る料理は優しい味付けなので、外国のレストランの味は少し刺激が強いのかもしれない。
私のブイヤベースは驚くほどのボリュームで、子供たちに分けても十分な量が残った。
濃厚な味わいが、旅の疲れを癒してくれた。

家族でシーフード料理を楽しみ、ホテルの部屋に戻ったのは午後9時前だった。
モントレーで過ごした最後の朝から、サンディエゴへの移動、そして新しい街での夕食。
振り返れば、今日もいろいろなことがあった。
翌日は、今回の旅行の目玉その2。
シーワールド・サンディエゴ(SeaWorld San Diego)だ。
明日の道順を確認してベッドに入り、すぐに意識を失うように眠りについた。
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第12話へ続く(準備中)

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